みりん(本みりん)は、まろやかな甘さが特徴の酒類調味料。みりんの代わりに、みりん風調味料や砂糖を使って作ったお料理が上手に出来上がらなかった…という経験はありませんか?
実は、アルコールがほとんど入っていないみりん風調味料や、ショ糖が主成分である砂糖では、みりんがもたらす素晴らしい調理効果は得られません。
今回は、お料理をする上で知っておくと便利な「みりんの調理効果」をご紹介します。
みりんの成分
みりんの調理効果に作用する主な「みりんの成分」は下記の通りです。
① 糖類(グルコース、イソマルトース、オリゴ糖など)
② アミノ酸(グルタミン酸、ロイシン、アスパラギン酸など)
③ 有機酸(乳酸、クエン酸、ピログルタミン酸など)
④ 香気成分(フェルラ酸エチル、フェニル酢酸エチルなど)出典元:本みりんの知識|全国味淋協会
みりんは、もち米、米麹、焼酎またはアルコールを原料としています。長期間、アルコールの存在下で、糖化・熟成することで、上記の成分が作られます。
糖類、アミノ酸、有機酸、香気成分に加え、原料のアルコールがお料理に嬉しい効果を発揮します。
みりんの調理効果
みりんには、お料理を美味しくする様々な効果があります。
2. 照り、ツヤを出す
3. 臭みを消す
4. 味の浸透をよくする
5. 煮崩れを防ぐ
皆さんはいくつ知っていましたか?
これは、先述した「みりんの成分」や「アルコール」によって作用するものです。それでは、それぞれの効果について確認していきましょう。
旨味やコク、上品な甘味を付ける
もち米や米麹などを原料とするみりんは、お米由来の旨味やコク、上品でまろやかな甘味を付けることができます。
みりんの甘味はグルコースを主体に、イソマルトース、ニゲロース、コウジビオース、マルトースなどの各種二糖、三糖類やオリゴ糖で構成された極めて温和なものである。……また、これらの糖類の中には甘味だけでなく苦味などを呈するものもあり、それらの味が複雑にからみあって、コク味などのふくらみを食品に付与する。
出典元:みりんの知識 p.148(森田日出男 幸書房)
砂糖の甘味成分は「ショ糖」のみですが、みりんの甘味成分は「ブドウ糖」や「オリゴ糖」など何種類もの糖が含まれています。また、甘味だけではなくアミノ酸や有機酸などの成分が、複雑にからみあうことで砂糖にはない旨味やコクを出すことができます。
煮切りみりんを作れば、砂糖と同じくらい、もしくはそれ以上に甘味が出るので、加熱しないお料理にも使えて便利です。
照り、ツヤを出す
みりんの糖分は、食材に美しい照りやツヤを付けることができます。
「糖分が作用するなら、砂糖でも代用できるのでは?」と思うところですが、下記のような実験結果が出ています。
鰆の照焼の光沢度
調味液 みりん+醤油 砂糖+清酒+醤油 砂糖+醤油 光沢度 180 152 132 出典元:みりんの知識 p.141(森田日出男 幸書房)
「みりん」を代用した調味液で鰆の照焼を作り、光沢度を測ったところ、「砂糖+醤油」よりも「みりん+醤油」の方が、なんと48ポイントも光沢度が高いそうです。(測定値に10ポイント以上の差があれば肉眼でも認識できるとのこと。)
これは、みりんに含まれる複数の糖類が作用するため。砂糖には出せない照り、ツヤを付けられます。
臭みを消す
みりんに含まれるアルコールは、揮発する時に臭みを消してくれます。これは、他のにおいを一緒に取り除く共沸効果によるものです。
また、アルコールだけではなく、糖類やアミノ酸、香気成分によっても臭みを消したり、包み隠す効果があります。
みりん中のグルコースなどの還元糖は、アミノ酸などのアミノ基を有する化合物と反応して、α-ジカルボニル化合物などの中間生成物を生み出す。これらの反応性に富んだ化合物が、種々の悪臭成分と化学的に反応して消臭効果を示す。
出典元:みりんの知識 p.141(森田日出男 幸書房)
肉や魚、エビの下ごしらえに最適です。
味の浸透をよくする
みりんに含まれるアルコールは、分子が小さいので、食材への浸透が速いです。みりんと他の調味料を一緒に使うことで、アミノ酸、有機酸、糖類などの成分も素早く食材に浸透し、均一な味付けができます。
アルコールは分子が小さいためアミノ酸・有機酸・糖類等の食材への浸透が速い
↓
料理の味つけが速くしかも均一に仕上がる出典元:本みりんの知識|全国味淋協会
みりんは、消臭効果もあり、味の浸透もよくするので、一番最初に入れると効果的です。
煮崩れを防ぐ
みりんに含まれるアルコールや糖類は、煮崩れを防いでくれます。
動物性食材 糖類・アルコールの作用で筋繊維の崩壊を抑制 植物性食材 糖類・アルコールの作用ででんぷん粒の流出を抑制 出典元:本みりんの知識|全国味淋協会
動物性食材である肉の組織を引き締めたり、植物性食材であるじゃがいもの細胞壁を壊れにくくする作用は、主にアルコールが関与していますが、糖類と一緒に使用することでさらに効果を発揮します。
いかがでしたでしょうか?
みりんを使うことで、出来上がりの見た目や美味しさに違いが出ることを感じていただけたかと思います。砂糖やお酒、アルコールがほとんど入っていないみりん風調味料では、代用できません。ぜひ、みりんの特徴をお料理に活かしてみてくださいね!
日本発酵文化協会認定 発酵マイスター。白みりん発祥の地・流山のmachiminと出会い、もっとたくさんの人に発酵食品であるみりんの魅力を広めていきたい!と「本みりん研究所」を立ち上げる。現在育休中の一児の母。